予想だにしていないことが起こるのがオリンピック。
ノーモーションからの高速タックルを武器に世界を制してきた “レスリング女王” の吉田沙保里選手がまさかの敗戦で銀メダルに終わりました。
吉田選手を破ったのはアメリカのヘレン・マロウリス(マルーリス)(Helen Maroulis)選手、24歳。
正直、女子フリースタイル53kg級において、吉田選手のライバルはスウェーデンのソフィア・マットソン(Sofia Mattoson、リオ五輪銅メダル獲得)だけかと思っておりました。
というのも、マットソンは今まで吉田選手には勝てないものの、世界選手権2年連続準優勝のヨーロッパチャンピオン。
世界ランキングもずっと2位をキープしており、吉田選手の最大のライバルと呼ばれていたからです。
そのマットソンが準決勝で敗れた相手がヘレン・マロウリス(マルーリス)。
ヘレン・マロウリスは勢いそのまま、決勝で吉田選手にも勝つという快挙を達成いたしました。
Helen Maroulis upsets Japan’s 3-time gold medalist Saori Yoshida to become 1st American woman to win wrestling gold. pic.twitter.com/tWzLBCRnfV
— SportsCenter (@SportsCenter) 2016年8月18日
出典: Twitter
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吉田選手の敗因は?
2015年の世界選手権、55kg級で優勝したノーマークの選手
今回のリオ五輪、吉田選手の階級は53キロ級。
2015年の世界選手権大会、53キロ級で吉田選手はマットソン(スウェーデン)を下し、優勝しております。
この大会、五輪種目から外された55キロ級で優勝した選手こそが、ヘレン・マロウリス選手なのです。
五輪を占う上で参考となる直近の世界選手権で、他の階級に出場し対戦しなかった相手だけに、メディアもノーマークだったのではないでしょうか。
(尚、吉田選手が五輪3連覇してきた階級は55キロ級。吉田選手は五輪55キロ級消滅後、53キロ級に転向されました。)
パワーとスタミナを武器にした若手選手
北京五輪前、吉田選手は女子ワールドカップ(55キロ級)団体戦で、マルシー・バンデュセンというアメリカの選手に黒星を喫しております。
またロンドン五輪前、吉田選手は同じく女子ワールドカップ(55キロ級)団体戦で、ワレリア・ジョロボアというロシアの選手に黒星を喫しております。
共通しているのが、以下の点。
- ノーマークの選手
- 吉田選手を研究しつくしたタックル返しを特訓した若手の選手
勝ち続けているイメージが強い吉田選手ですが、過去には敗戦した経験もあるのです。
しかし、吉田選手は負けた経験を活かし、自身の得意のタックルを徹底的に見直し、磨き上げてきました。
そうして、オリンピック・世界選手権のような大きな舞台では負け知らずの強さを誇ってきたのです。
吉田選手に土をつける人間がいるのであれば、それはマットソンのような何度も戦っている選手ではなく、急に出現した選手。
世界ランキング上位にも入っていない、パワーとスタミナを武器にする、何も失うものがないノーマークの若手選手。
それが今回のヘレン・マロウリス(ヘレン・マルーリス)選手だったのでしょう。
(過去のマロウリス選手と吉田選手との対戦成績は2戦2敗で吉田選手に分がありました。)
ヘレン・マルーリスは4年間、吉田を研究!
2012年世界選手権55キロ級の決勝で、吉田選手はヘレン・マルーリス選手と対戦し、勝利を収め、世界選手権10連覇を達成しました。
53キロ級に転向後、2014年・2015年の世界選手権はどちらも決勝でマットソンを退け、吉田選手は優勝しております。
しかし世界の猛者たちがこのまま指をくわえているだけではありません。
どうしたら吉田に勝てるのか?
世界中が吉田選手にタックルを入らせない方法、つまりタックル返しを研究し続けておりました。
吉田選手が憧れとコメントしているヘレン・マルーリス選手は、実に4年間、吉田選手を更に研究してきたと言われております。
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追われるものと追うもの
メディアは吉田選手があたかも敵知らずの圧倒的な強さで過去も今現在も勝ち続けているかのように報道してきておりました。
しかし、ここ最近の国内外の試合では、ときには失点を許しリードされる展開を強いられ、最終的にギリギリで勝利を収めるような試合も増えてきておりました。
それでも最後の最後で、相手を跳ね返し勝利を収めてきたのが吉田沙保里選手だったのです。
国内外の選手が皆全員、吉田選手を研究し続けてきたことが、吉田選手がここ最近、厳しい戦いを強いられてきた原因となっていたのでしょう。
印象に残っているのが、2015年の世界選手権大会、53キロ級で優勝した吉田選手は試合後、珍しく泣きました。
マットソンとの決勝で薄氷の勝利。
試合後のインタビューで吉田選手は「後輩のエリ(登坂絵莉さんのこと)が頑張って優勝したから一緒に祝いたかった」と号泣。
吉田選手の背負っているプレッシャーは計り知れない、と思えた瞬間でした。
追われるものと、追うもの。
追われることの辛さ、厳しさ。
リオ五輪の舞台で、ついに追うものが追われるものに勝利を収めました。
今回、リオデジャネイロの地で沙保里スマイルが見れなかったことは本当に残念です。
しかし、今までずっとトップに君臨し続けてきた吉田選手への尊敬の念を禁じ得ないのです。